夕刻、10月10日にオープンしたばかりの東大寺ミュージアムに行った。法華堂本尊の不空羂索観音が、日光菩薩、月光菩薩を従えた偉容を初めて見た。特別展のようだが、将来は法華堂に戻されて拝観できるようになるのだろうか。仏像が旅をすることは珍しくない。今年、京都の東寺に行った時は、立体曼荼羅を構成する仏像の何体かが東京の「空海と密教美術展」に出張していたし、先週訪れた神護寺では出張帰りの「五大虚空蔵菩薩」を拝観したところだ。
神護寺で聞いた話では、「東京の展覧会で見たから神護寺に拝観に来た」という人が多いようだ。展覧会で見たから神護寺に行く必要はないと思う人もいるかも知れない。僕自身は、あるべき空間で仏像を拝観してみたいと思う。このたび東大寺ミュージアムで見た不空羂索観音を、法華堂に本尊として存在する姿を拝観してみたいものだ。
奈良国立博物館でも感じたことだが、小さな展示物の展示位置が高すぎる。車いすに座っていたら見るのに苦労するであろうし、小学校中学年くらいの子どもでも背伸びしてやっと見ることができるかどうかという位置である。展示品の保全のために一定の高さを設けているのかも知れないが、何とかならないものだろうか。実際に今日は修学旅行生(小学校と高校)も東大寺境内を歩いていた。地元の小学生であれば、低学年児童であっても展示を見たいはずである。
東日本大震災直後に比べると、関西の外国人観光客は回復してきているという印象を持った。ヨーロッパ人の観光グループも複数いたし、中国の団体旅行客もいた。大仏殿の中ではスイス人が毛筆で書いた寄贈瓦が置かれていた。(アルファベットだが)
小学生の修学旅行生がヨーロッパ人と思われる観光客を囲んでいる。何をしているのかとのぞき込んでみると、修学旅行のしおりにサインを書いてもらっているのであった。観光に来てサインをねだられた方は面食らうであろうが、微笑ましい光景だった。