近くに住んでいるうちは「正倉院展」を毎年見に行くことにした。去年は遷都1300年祭だったためか、展示品も華やかで客も多かったように思う。「螺鈿紫檀五絃の琵琶」の展示ケースは30分待ちくらいの混雑だった。
今年は華やかな展示物は少ないかも知れない。メディアで取り上げられていたのは聖武天皇の宝剣と蘭奢待であった。蘭奢待を模したチョコレートが8500円で売られているという新聞記事を見たが、博物館内では見つけることができなかった。ただ、実物を見るとチョコレートを連想する色合いであった。なぜ関連グッズが「チョコレート」なのかと思ったが、納得した次第である。宝剣は確かに鞘の装飾が華麗であったけれども、それ以上に印象に残ったのは刀身の光である。手入れされているせいなのか、1点の錆も見当たらない。刃の部分はまさに真剣そのものの鋭利さを見せている。武器としても相当な価値があるように作られたのだろう。だが僕はそこに武器の気配を感じなかった。その切っ先の鋭利さまでもが、権威の象徴であるように思われたのだった。(後日に続く)