「絶対音感があるので全ての音が楽譜にできる」という話は良く聞く。だが、音はアナログであり、音階はデジタル的である。和音の組み合わせが無限にあると仮定しても、全ての音が楽譜にできるという仮説はにわかに信じがたい。たいていの場合、音階が和音ではなく、短音で再現されているので余計に疑いたくなるのである。似たような音に当てはめて楽譜にしたものに違和感を感じないとすれば、それは逆に音感が甘いと言えるのではないだろうか。本当のところはどうなのだろう。
僕には絶対音感がないので、おそらく聞いた音を再現することもできないし、「ラ」の音で声帯を震わせることもできないだろう。ただし、相対音感はあるので、一連のメロディの中で1音が狂っている場合などはわかる。
家内には絶対音感があるらしい。どの程度の音感なのかを聞くと「誤差は5Hz以内。440Hzと443Hzの違いが分かる程度」だと言う。自宅のピアノの音の狂いが気になってピアノのチューニングをすることもある。すべての弦のテンションをやや強めにしておくと、落ち着いたときにちょうどになるそうだ。一体それがどの程度の音感なのか、僕にはピンと来ない。ただ、家内は調律の甘いピアノを弾くと気持ちが悪くなるそうだ。その点は不便かも知れない。
家内に似たのかそれとも歌が好きだからなのか、娘にも絶対音感があるように思われる。曲の耳コピーができる。どこかで聞いてきた歌を家で歌ったり、ピアノやバイオリンで音を出したりしていることがよくある。家内がそれを楽譜に起こして音楽の先生に見せたことがある。音階とメロディは合っていた。